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熱分析装置の原理

熱分析とは

熱分析とは、材料を加熱や冷却といった温度変化にさらしながら、その材料がどのように反応するかを連続的に調べる方法です。具体的には温度を一定速度で上げ下げし、そのとき材料が吸収したり放出したりする熱の量や、質量の増減、形の変化などをセンサーでキャッチしてグラフ化します。ちょうど、料理中のお鍋に温度計と重りを取りつけて、温度が上がるにつれて水分が蒸発して軽くなるのを観察したり、かたまりが溶けて見た目が変わるのを温度計で確かめたりするイメージです。こうして得られたデータから、融点やガラス転移点、分解温度など材料の大切な「性格」を読み取ることができます。材料の品質管理や新素材の開発、製品の安全性評価など、幅広い分野で必要とされる基盤技術です。

熱分析装置とは?

製品や素材が熱を受けたとき、どのような変化を示すかを調べることは、材料開発や品質管理において極めて重要です。そのような温度変化に伴う物質の物理的・化学的変化を測定する技術が「熱分析」と呼ばれ、これを実現するのが熱分析装置です。

熱分析では、たとえば以下のような現象を計測できます。

これらの測定結果は、高分子材料、金属、セラミックス、医薬品、食品など、幅広い業界で利用されています。熱分析装置は、製品の信頼性評価や最適な加工条件の決定に欠かせない存在となっています。

熱分析装置の原理と代表的な5機種の仕組み

熱分析装置にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる測定原理をもとに、特定の熱挙動を捉えます。以下では、代表的な5つの装置(DSC・TG・TMA・DMA・DTA)について、原理と特徴を詳しくご紹介します。

DSC(示差走査熱量測定)

DSC(Differential Scanning Calorimetry)は、物質が吸熱・発熱する際に必要な熱量を測定する装置です。

TG/TGA(熱重量測定)

TG(Thermogravimetry)またはTGA(Thermogravimetric Analysis)は、加熱中に発生する質量の変化をリアルタイムで記録する装置です。

TMA(熱機械分析)

TMA(Thermomechanical Analysis)は、温度変化に応じた材料の寸法変化を測定する装置です。

DMA(動的粘弾性測定)

DMA(Dynamic Mechanical Analysis)は、材料に繰り返しの力を加えて粘弾性(弾性と粘性)の変化を測定する装置です。

DTA(示差熱分析)

DTA(Differential Thermal Analysis)は、試料と基準物質の温度差から吸熱・発熱現象を捉える装置です。

熱分析装置の選び方

装置を選ぶときは、まず何を測りたいのかをはっきりさせることが第一です。例えば、素材の溶ける温度や吸熱量を知りたいなら示差走査熱量測定(DSC)、熱分解の過程や発生ガスを調べたいなら熱重量測定(TG)が向いています。さらに、材料が温度変化でどれくらい膨張するかを調べたいなら熱機械分析(TMA)、粘弾性といった弾性特性の変化を細かく見たいなら動的粘弾性測定(DMA)を選びます。測定対象が粉末なのかフィルムなのか、あるいは液体なのかによっても適した装置オプションは変わるため、試料の形状や重量、温度帯域なども事前に整理しておくことで、無駄のない機種選定が可能になります。

主な仕様要件(温度範囲・雰囲気制御・感度)

装置を選ぶ際には、まず測定できる温度の上下限を確認します。マイナス数十度から千度以上まで測れる機種もあれば、狭い範囲に特化した機種もあるため、目的に応じて選び分けが必要です。次に、測定中の雰囲気制御機能をチェックします。酸化を防ぐための不活性ガス雰囲気、湿度を一定に保つ機能、あるいは真空環境を作る機能などがあると、より実際に近い条件での評価が可能です。最後に、感度や分解能の性能は分析の精度に直結しますので、微小な熱変化や質量変化も捉えられるかどうか、装置のノイズレベルや基線の安定性も含めて確認しましょう。

コスト・メーカーサポートのポイント

装置本体の価格だけでなく、定期点検や消耗品、修理費用などランニングコストを含めた総費用を把握することが大切です。また、設置や操作方法のトレーニング、データ解析ソフトの使い方サポート、故障時の対応スピードなどメーカーのアフターサービスも長期的に見ると重要な比較ポイントになります。国内外の複数メーカーを比較検討し、実際にデモ機で自社サンプルを測定してみることで、価格以上の価値が得られるかどうかを判断できます。

試料準備と測定条件のポイント

試料形状・前処理方法

試料の取り扱いは結果の再現性に大きく影響します。例えば粉末の場合は粒度を揃えて熱伝導を均一にし、フィルムやシートの場合は寸法をそろえて同じ厚みで測定できるようにします。表面に汚れや油分が付着していると誤差の原因になるため、測定前にアルコール拭きや乾燥処理を行い、実験室内の湿度管理も徹底するとよいでしょう。特に発生ガス分析を行う場合は装置内部へのガス侵入を防ぐため、試料置き場をきれいに保ち、必要に応じてパージガスを流し続けることが求められます。

キャリブレーションとメンテナンス

装置の精度を長く保つには、定期的なキャリブレーションが欠かせません。温度校正ではインジウムやスズといった融点が既知の物質を使い、熱電対の表示温度を補正します。質量測定機能を持つ装置では標準おもりを使って秤量精度を確認し、異常があればセンサー部品の交換やクリーニングを行います。装置由来のノイズや疑似ピークが増えた場合はブランク測定を実施し、問題の切り分けを行うことで、日常点検と必要な修理を効率よく進められます。

測定プログラム設定のコツ

プログラム設定では、昇温速度や保持時間、冷却速度を試料特性に合わせて調整します。あまり速く温度を上げすぎると温度遅れが大きくなり、反応の正確な開始温度がずれてしまうことがあります。一方、遅すぎると実験時間が延びるうえ、二次反応が進みすぎるリスクがありますので、通常は数℃/分の速度で複数パターンを試して最適値を探ります。保持ステップを設けることで、段階的な反応の進み具合も把握しやすくなりますし、異なる手法を同じ装置で連続実行する際は手法間の安定化時間も考慮しましょう。

データ解析と活用事例

熱分析で得られる曲線には、ピークの位置や形、立ち上がりと立ち下がりの傾きに意味があります。DSCでは吸熱ピークの開始温度やエンドセット温度を読み、面積から反応熱量を算出します。TGでは重量減少の割合と段階的な減少点を確認し、分解段階や脱水反応の進行度合いを判断します。グラフを滑らかにするための平滑化処理や、微小ピークを際立たせる微分処理などの手法を使うと、小さな反応も見逃さずに解析できます。最近のソフトウェアは自動ピーク検出機能や基線補正機能が充実し、初心者でも簡単に高精度の解析が行えるようになっています。

高分子材料・食品・医薬品の測定例

高分子材料の例では、プラスチックのガラス転移や結晶化、融解温度をDSCで調べ、材料の加工温度や使用温度域を決めるために使われます。食品分野では、小麦粉やでん粉の糊化温度や老化挙動を測定し、パンや菓子の品質評価に役立てられています。医薬品分野では、薬効成分の融解熱や結晶多形を解析し、安定性試験や製剤開発に活用されます。これらの事例を通して、熱分析が素材の性能設計や品質管理に欠かせない役割を果たしていることが理解できるでしょう。

まとめ:目的に応じた熱分析装置の選定が重要

熱分析装置にはそれぞれ異なる原理と得意分野があり、測定対象や分析目的によって最適な装置の選定が求められます。

これらの装置の仕組みと測定特性を理解することで、より精度の高いデータ取得と問題解決が可能になります。

当サイトでは、研究開発部門向けに用途に適した熱分析装置メーカーを紹介しています。DSCを含む熱分析装置をお探しの方は、ぜひ参考にしてください。

製品特徴で選ぶ
DSC(示差走査熱量計)3選
目的・用途にあった性能・特徴で製品選びをすることにより、さらに実験精度を高めたり、効率的に実験結果を得ることができるようになります。
ここでは、各目的ごとに適した性能・特徴を持つDSC製品・メーカーを3種紹介しています。

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商品例 商品画像 特徴部分
研究プロセスの
改良を助ける
Discovery DSC 2500
(ティー・エイ・
インスツルメント・
ジャパン)
Discovery DSC 2500(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン)
画像引用元:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン公式HP(https://www.tainstruments.com/discovery-dsc-series/?lang=ja)
研究・開発の高度化に
高い精度と効率で
応える
特許取得済み技術により±0.005°Cという精細な温度精度・高分解能を誇りつつ、アプリライクなタッチ画面による効率的な操作感を実現。一度の実行で比熱容量測定と保存を同時に行うことが可能で、測定プロセスの最適化とコスト削減、取得データの一貫性・信頼性の向上に寄与します。
材料加工の
見直しを助ける
NEXTA® DSC
(日立ハイテク)
NEXTA® DSC(日立ハイテク)
画像引用元:日立ハイテク公式HP(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/products/analytical-systems/thermal-analysis/nexta-dsc.html)
微細な熱特性変化を
見逃さない機構と性能
200万画素の高解像カメラを搭載、温度変調DSCにも対応し、局所的な試料観察に適しています。試料の融解やガラス転移などの過程を詳細に観察することが可能となり、材料特性を正確に見極め、より適した加工条件を導き出すことに貢献します。
無人検査の
安定化を助ける
DSCvesta2(リガク)
DSCvesta2(リガク)
画像引用元:リガク公式HP(https://rigaku.com/ja/products/thermal-analysis/dsc/dscvesta2)
正常な検査環境を
測定前に装置が
自己診断
装置自体に正常な動作が行えるかを自動で診断する機能が搭載されており、測定前に問題を早期発見・対応することができます。28試料までセット&1000連続測定が可能、膨大な測定点数への対応や長時間の無人測定に適した製品です。
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示差走査熱量計
3選