医薬品や高分子材料では、同じ成分でも結晶構造が異なる「結晶多形」が品質に影響します。本記事では、熱分析が結晶多形の評価にどのように活用されているのか、測定法や実施時のポイントを交えて詳しく解説します。
結晶多形とは、同じ分子構造を持ちながらも、異なる結晶構造で固化した状態のことです。たとえば、斜方晶系や単斜晶系など、結晶系の違いによって物理的特性が変化し、多様な多形が現れます。どの多形が生成されるかは、温度や湿度、生成条件などに左右されるため、安定した状態を判断するには精密な分析が欠かせません。
結晶構造の違いは、融点や溶解性、安定性に直接影響します。特に医薬品分野では、吸収速度や体内動態にも関係するため、多形の管理は厳格に行われているのが現状です。機能性材料においても、光学特性や導電性といった製品性能の根幹に関わる要素であることから、高い信頼性を備えた評価方法の確立が重要視されています。
熱分析は、温度変化によって生じる吸熱や発熱の反応を通して、物質の相転移や構造変化を検出する手法です。結晶多形は、加熱や冷却の過程で構造転移を起こすことが多く、これらを非破壊で観察できる点が大きなメリットです。融解や転移のタイミングを明確に捉えることで、多形の特定や安定性の比較が可能になります。
X線回折(XRD)や赤外分光法(IR)といった手法も結晶多形の解析に用いられますが、これらは主に構造や分子振動を捉えるものです。一方、熱分析は物質の熱的性質そのものを直接評価できるため、構造的な違いが熱反応として明確に現れる多形の識別に適しています。複数の手法を組み合わせることで、より信頼性の高い解析が可能となります。
DSCは、加熱中の試料と基準の温度差から吸熱・発熱を測定し、融点や転移温度、転移熱量を検出する手法です。多形ごとの熱挙動を視覚的に捉えることができ、構造の違いによる安定性の比較や、異なる多形の存在確認に有効です。スクリーニングや品質保証の現場でも広く利用されています。
TGは、試料の質量変化を温度と時間の関係で記録し、熱的な分解や脱水などの挙動を確認する手法です。結晶水を含む多形では、加熱による脱水が質量の減少として現れ、それが多形識別の指標となります。また、熱分解の開始温度の違いから、熱安定性の比較も可能です。
TG-DTAでは、質量変化と熱反応を同時に観察できるため、熱挙動と構造変化の関係をより深く理解できます。特に、多形転移に脱水や分解が伴う場合、その挙動を的確に捉えるのに有効です。
熱分析では、昇温速度やサンプル量、試料の配置など、測定条件が結果に影響を与えるため、最適化が必要です。条件のばらつきを抑え、複数回測定によって再現性を確認することが、信頼性の高いデータ取得につながります。
結晶多形の転移挙動は、加熱や冷却の履歴によって変化することがあります。過去の温度変化が測定結果に影響を与える可能性があるため、試料の前処理や環境条件を統一することが重要です。履歴を把握したうえで解析する姿勢が求められます。
熱分析単独でも多くの情報を得られますが、XRDやIRなどと組み合わせることで、熱的変化と構造的変化を両面から把握できます。これにより、分析精度と信頼性が大きく向上し、多形識別の確実性が増します。
結晶多形は、製品性能や品質管理において極めて重要な要素です。熱分析は、構造の違いを熱的な観点から明確に捉える手法として、多形の評価に有効です。DSCやTG、TG-DTAといった測定法を使い分け、他の手法と併用することで、より高精度な解析が可能になります。多形の制御と安定供給を実現するためには、熱分析の活用が欠かせません。
当サイトでは、研究開発部門向けに用途に適した熱分析装置メーカーを紹介しています。DSCを含む熱分析装置をお探しの方は、ぜひ参考にしてください。
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| 商品例 | 商品画像 | 特徴部分 |
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研究プロセスの
改良を助ける Discovery DSC 2500
(ティー・エイ・ インスツルメント・ ジャパン) |
画像引用元:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン公式HP(https://www.tainstruments.com/discovery-dsc-series/?lang=ja)
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研究・開発の高度化に
特許取得済み技術により±0.005°Cという精細な温度精度・高分解能を誇りつつ、アプリライクなタッチ画面による効率的な操作感を実現。一度の実行で比熱容量測定と保存を同時に行うことが可能で、測定プロセスの最適化とコスト削減、取得データの一貫性・信頼性の向上に寄与します。
高い精度と効率で 応える |
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材料加工の
見直しを助ける NEXTA® DSC
(日立ハイテク) |
画像引用元:日立ハイテク公式HP(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/products/analytical-systems/thermal-analysis/nexta-dsc.html)
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微細な熱特性変化を
200万画素の高解像カメラを搭載、温度変調DSCにも対応し、局所的な試料観察に適しています。試料の融解やガラス転移などの過程を詳細に観察することが可能となり、材料特性を正確に見極め、より適した加工条件を導き出すことに貢献します。
見逃さない機構と性能 |
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無人検査の
安定化を助ける DSCvesta2(リガク)
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画像引用元:リガク公式HP(https://rigaku.com/ja/products/thermal-analysis/dsc/dscvesta2)
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正常な検査環境を
装置自体に正常な動作が行えるかを自動で診断する機能が搭載されており、測定前に問題を早期発見・対応することができます。28試料までセット&1000連続測定が可能、膨大な測定点数への対応や長時間の無人測定に適した製品です。
測定前に装置が 自己診断 |